ある葬儀の風景 view
故人と家族の共同作業
2018/09/07
一般的に大切な人を亡くし、深い悲しみの中で行われる葬儀社との打ち合わせは、どうしても葬儀社主導権になってしまいがちです。
通夜・葬儀までの時間はあわただしく、決めなくてはならないことは山ほどあり、その一つ一つを丁寧に選択していくと結構な時間を費やしてしまいます。体も心も疲れた状態で、ある程度まとまった金額を決めてゆくわけですから、後で不満が残ることもあるわけです
かなり前のある日のご葬儀のお話です。
「お別れ会」ということで宗教を伴わない形でのお葬式でした。打ち合わせの段階からご長男様にある覚悟が見えました。祭壇・お返しの品などはパンフレットを見ながらその場で決めていかれるのは通常通りでしたが、式典の内容そのものは明確に決まっていたのです。「お別れ会」って宗教者を呼ばない事は決まっていても、意外に内容は考えていない事が多いように思います。
たぶん故人が生前ご自身の死期を悟りご家族と、前向きにいろいろなことを話し合ってこられたのでしょう。
親族も納得しておられるようでした。おそらく息子さんが作成したであろう思い出の写真のスライドショー。一枚一枚に結構長いコメントがついていて、司会者が写真に合わせて読みました。
そして、追悼の言葉があり、最後は「昴」を皆さんで合唱。ここで私はミスをしました。前もって昴のカセットテープを預かっていたのですが、確認作業を怠ってしまったのです。最初はよかったのですが、テープが伸びきった音になってしまいました。その会場はたまたまエレクトーンがあったので、テープの代わりにエレクトーンで伴奏をしてその場をしのぎましたが、非常に焦ったのをよく覚えています。
出棺前に、息子様から「素早い対応でありがとうございました。」とお礼を言っていただけたので結果オーライでした。
そしてもう一言 「こんな自由な葬儀もあるんですよ。葬儀屋さんもいい勉強になったでしょう?」と笑いながら・・
ご家族は深い悲しみの中ではありましたが、意志を示してくれた故人を誇らしく思い、見送られたことでしょう。まだ「終活」という言葉が世に出ていないか、浸透していないかの時代でしたが、まさに「終活」をされていたのです。
故人の思いを遂げたご家族は達成感に近い感覚さえおありだったように見えました。故人の遺志を貫いたご葬儀は故人とご家族の最後の共同作業となったわけですから・・
私の葬儀は何もしないでくれ・・と言い残すより、はるかに残された人の心の拠り所となると思います。
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こだわったからこその自宅葬
代表者(森田理恵子)
プロフィール
経歴
- 1980年3月
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鹿児島短期大学音楽科卒業。
ピアノ講師として子どもや大人のレッスンをする傍ら、婚礼でエレクトーン・ピアノ演奏をしていたが、1998年、縁あって某大手葬儀社にて司会・ピアノ演奏・アテンダント・控室の清掃など、葬儀現場の女性の仕事を請け負うようになる。 葬儀現場における様々な業務に従事し、葬儀を一から学ぶ。
- 2001年
- 有限会社エムアール・コーポレーションを設立。
- 2007年
-
ある思いからその某大手葬儀社との契約を解除。
社員・スタッフはその葬儀社に移籍、一人でゼロからの再スタート。
- 2015年
- 一般社団法人自分史活用推進協議会認定 自分史活用アドバイザー資格取得。
- 2017年
- 一般社団法人グリーフサポート研究所認定 グリーフサポートバディ資格取得。
- 2018年現在
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約10社からの司会・ピアノ演奏の依頼を受け、スタッフを派遣。自らも司会者として奮闘中。
もっとご遺族の為にできることがあるのではとの想いから2015年より、株式会社ジーエスアイで、以前から興味のあったグリーフサポートを学ぶ。
- 2018年
- 一般社団法人グリーフサポート研究所認定 セレブラント資格取得。